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石油汚染とバイオレメディエーション 微生物の力で石油で汚染された環境を浄化します

インドネシア海域からの石油分解菌の分離とその解析

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石油分解菌を自然環境中で”活性化”する条件の検討

緩効性肥料の選定

 海浜環境における石油汚染のバイオレメディエーションには、緩効性の肥料が使用されます。市販の肥料は様々なものがあり、その成分、溶出の持続性が異なっています。本調査では、窒素・リンの海水への溶出量について検討し、バイオレメディエーションに適していると判断できる肥料を選抜しました。緩効性肥料を用いる目的は、必要量の窒素・リンを持続的に供給することです。石油分解菌のバッチ培養においては、窒素は2ppm程度、リンは0.5ppm程度で十分な生育を示すため、今回の溶出量の良否の基準はこの濃度に従いました。
 この溶出試験の結果、オスモコート、次いでスーパーIBが今回の供試肥料の中で最もバイオレメディエーションに適した肥料と判断しました(【図1】)。

【図1】海水中での緩効性肥料からの溶出量(緩効性肥料の選定)
【図1】海水中での緩効性肥料からの溶出量(緩効性肥料の選定)

大型海浜模擬実験による評価

 緩効性肥料添加の効果を、(株)海洋バイオテクノロジー研究所釜石センターの大型海浜模擬実験装置を用いて調べました。海水温度は、20℃及び30℃で実施しました(【図2】)。原油としてはムース化したものを用いましたが、20℃と30℃ではムース油の挙動が全く異なっていました。30℃において、ムース化原油の流動度がはるかに高くなっていました。

【図2】大型海浜模擬実験による評価
【図2】大型海浜模擬実験による評価

 いずれの温度においても、肥料添加3日以内に視認できる変化が認められました。海水表面の原油スリック、又は砂れきに付着した原油の量は、バイオスティムレーションによって3日以内に急速に減少しました。一方、残留した原油を分析すると、微生物による分解はほとんど認められませんでした。このことから、バイオスティミュレーションによって原油の乳化が速やかに起こり、砂れきからの原油のはく離等が起こったのであろうと考えられます。乳化された原油は、海浜模擬実験装置外へと流出したと考えられます。
 このことから、バイオスティミュレーションの効果を正確に知るためには、物質の移動を測定できるような実験系を作らなければならないことが示唆されました。この教訓は、インドネシア実環境中での実証試験に生かされました(【図3】)。

【図3】実験開始三日目の水槽内
【図3】実験開始三日目の水槽内

小規模海浜模擬実験による評価

 既にいくつかの予備実験から、酸素の供給が石油分解の律速になる可能性が示唆されていました。そこで、酸素供給が十分に行われ、かつ、先の大型海浜模擬実験装置を用いた調査で明らかになった、原油の砂れきからのはく離と流出を定量的に評価できるような小型海浜模擬実験装置を作成し、日本の海水を用いた27日間のバイオスティミュレーション実験を行いました(【図4】)。

【図4】小規模海浜模擬実験による評価
【図4】小規模海浜模擬実験による評価

 容量60リットルの水槽の上部槽に縦10.5cm×内径2.6cmのガラス円筒を設置しました。このガラス円筒には、均一にムース油を付着(砂れき25g当たり擬似風化原油0.25mL)させた砂れきを25.0g詰めました。この円筒内の砂れきは、常に海水の干満によって洗われています。
 経時的に円筒をサンプリングし、ジクロロメタンを用いて砂れきからの原油抽出を行いました。抽出時の原油成分の損失を防ぐために、採取した砂れきとガラス円筒を丸ごとメジウム瓶にいれ、内部標準としてフェナントレン-d10を添加しました。この状態でジクロロメタンによる全抽出を行いました。得られた抽出液について適度に濃縮を行い、GC-MSにより各原油成分を分析しました。得られた各成分のピーク面積をフェナントレン-d10のピーク面積で補正し、各成分の残存量を算出しました。
 コントロールとして、肥料を添加せず、かつ、微生物を含まない人工海水を還流したものでの原油成分の残存量を測定しました。このコントロールにおいて、アルカン類及びPAHs/PACsの残存量は、一定量減少しました。すなわち、間欠的に海水面が上下することによる砂れき表面からの原油成分のはく離・流亡等が起こることが示されました。
 一方、肥料添加によって、アルカン及びPAHs/PACsの除去が著しく促進されました。このように、酸素の供給が十分に行われる系においては、肥料添加によるバイオレメディエーションの効果は、より顕著に現れることを確認しました(【図5】)。

【図5】GC-MSクロマトグラム
【図5】GC-MSクロマトグラム

まとめ

 以上をまとめると、以下のようになります。

  • 今回実験した緩効性肥料のなかでは、海浜環境における石油汚染のバイオレメディエーションにはオスモコートが最も適していました。
  • ムース化原油の性状は、海水の温度によって流動性が異なり、30℃では20℃より流動性がはるかに高くなっていました。
  • バイオスティミュレーションによって、砂れきに付着した原油の砂れきからのはく離が観察されました。
  • 物理的要因による砂れき表面からの原油成分のはく離・流亡の度合いは、炭化水素分子種によって異なっていました。
  • 酸素供給が十分であれば、1か月間で、アルカン及びPAHs/PACsの分解又は"可溶化"が起き、砂れきの顕著な浄化効果が認められました。

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