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微生物腐食 〜石油関連施設を対象として〜

微生物腐食対策実施のための基礎的情報の整備

腐食菌検出技術の開発│ 微生物腐食評価方法の提案│ 腐食防止技術の開発│

腐食菌検出技術の開発

 微生物腐食は硫酸塩還元菌によって起こるという通説が業界では余りにも有名であるため、現場で硫化水素と硫酸塩還元菌が検出されると、硫酸塩還元菌による腐食だろうと安易に判断されていました。しかし、本調査での原油タンク底水での鉄腐食菌の探索において強い鉄腐食の誘因となる硫酸塩還元菌は見出されず、鉄腐食性M. maripaludisが高頻度で分離されました。このため、激しい腐食を誘導する本微生物の特異的及び定量的な検出は、原油タンクにおける微生物腐食のリスク判定に重要であると考えられます。また、硫酸塩還元菌は直接的に鉄腐食の原因とはならないが、鉄腐食性M. maripaludis と共存することで、より強い鉄腐食が起こることも新たな知見として得られました。
 微生物腐食診断技術として、PCR 法を用いた鉄腐食性M. maripaludis と硫酸塩還元菌の特異的検出法の開発について述べます(【図1〜3】)。

【図1】M. maripaludis 単独及び硫酸塩還元菌存在下における鉄腐食量
M. maripaludis 単独及び硫酸塩還元菌存在下における鉄腐食量

 これまでに述べた調査の結果、鉄腐食性M. maripaludis を3株分離しました(KA1株、OS7株、Mic1c10株)。一方、同じM. maripaludis でも株レベルで鉄腐食能に違いが見受けられ、既知株等(JJT株、S2株、C5株、C6株、C7株、Mic4c08株)では鉄腐食を誘導しないことが判りました。このため、鉄腐食性M. maripaludis のみを検出する必要があります。「M. maripaludis の腐食機構」の解明において腐食遺伝子が推定されたので、この領域のORFをPCR増幅することにより鉄腐食性M. maripaludis の特異的検出を試みました。この結果、腐食遺伝子領域のORFのみ(MM2_1355、MM2_1357、MM2_1356)が鉄腐食性M. maripaludisで検出され、硫酸塩還元菌を含むそれ以外の微生物から本領域はPCR増幅されませんでした(【図2】)。

【図2】M. maripaludis における ORF の PCR 増殖
PCRによるORFの増幅確認
 上記で述べた腐食遺伝子領域のORFを定量的PCR増幅することにより、鉄腐食性M. maripaludis の定量的な検出を行いました【図3】。また、細菌や古細菌の全量を見るために16S rRNA遺伝子の増幅も行いました。これ以外に、PCR増幅によるM. maripaludis を含むメタン生成古細菌全般の検出に関してはメタン生成機構に関与するメチルCoMレダクターゼをコードする遺伝子領域(mcrA)を、PCR増幅による硫酸塩還元菌の特異的検出に関しては一般的に用いられる異化的亜硫酸還元酵素をコードする遺伝子領域(dsrAB)を標的遺伝子として使用しました。その結果、腐食性M. maripaludis を含むすべての特異的な標的遺伝子で、それぞれの微生物を特異的に検出することが出来ました。この定量的PCRは、単純な単一微生物由来DNAのみでなく、より高度な複合微生物由来DNA(腐食性M. maripaludis を約1/10量含む)においても再現性があり【図4】、実環境でも適用可能であると考えられます。

【図3】定量 PCR による各標的遺伝子(dsrAB、mcrA、ORF_1355およびORF_1357)の定量
定量 PCR による各標的遺伝子(dsrAB、mcrA、ORF_1355およびORF_1357)の定量

【図4】複合DNAを用いた定量PCRによる定量の評価
複合DNAを用いた定量PCRによる定量の評価

 ここまで、微生物腐食診断技術として、微生物の特異的検出を中心に調査してきました。一方で、見落としてはいけない重要な環境因子も存在すると考えられます。ここでは、炭酸塩濃度について説明します。
 炭酸による化学的な腐食が知られていますが、本試験条件の無菌対照区では顕著な炭酸腐食は生じていません。一方、鉄腐食性M. maripaludis がメタン生成を行っている場合、鉄の腐食速度は無菌対照区の12〜36倍であるという結果が得られました。しかし、利用できる炭酸が枯渇すると、その腐食速度はメタン生成時の1/3〜1/5にまで減少します。すなわち、環境要因としての炭酸濃度が鉄腐食性M. maripaludis の腐食において非常に重要な意味をもっていると考えられます。
 【図5】は、鉄腐食性M. maripaludis を様々な炭酸塩濃度で培養したときのカソードでの電子流出量を示したグラフです。

【図5】M. maripaludis による腐食における炭酸濃度の重要性
M. maripaludisによる腐食における炭酸濃度の重要性
 白、黄、赤と炭酸塩濃度が高くなっています。「Control(Fe→H2)」では、その炭酸濃度での化学的な水素発生から算出される電子流出量、「OS7(Fe→CH4)」では、メタン菌がメタン生成を行っているときのメタン生成量から算出される速度、「OS7(Fe→H2)」では、メタン生成が炭酸塩の枯渇により止まった後の水素発生から算出される速度となっています。グラフが示すとおり、メタン生成時のカソード反応速度は非常に高く、無菌対照区の12〜36倍となっています。一方、炭酸枯渇時では、無菌対照区よりも高いもののメタン生成時と比べると激減しました。この結果は、鉄腐食性M. maripaludis による腐食において炭酸の供給が非常に重要な要素となっていることを示しています。したがって、鉄腐食性M. maripaludis の腐食リスクを評価する上で、炭酸の供給という環境因子のモニタリングも必須であると考えられます。

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