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フィチン加水分解

概要

フィターゼとは、フィチン (フィチン酸) のリン酸エステルの加水分解を触媒する酵素で、 触媒するリン酸エステルのポジションの違いにより、EC 3.1.3.8、EC 3.1.3.26、EC 3.1.3.62、EC 3.1.3.72と区別されている。
微生物が生産し、かつ酵素活性が確認されているのは、EC 3.1.3.8、EC 3.1.3.26 である。
フィチン (フィチン酸) はキレート作用が強く多くの金属イオンを強く結合するが、フィターゼはこれら金属イオンが結合するリン酸エステル部分を加水分解するので、 遊離されたリン酸や金属イオン (ミネラルなど) を生物は利用できるようになる。
フィチンを多く含む穀物 (ダイズ、トウモロコシなど) で飼育されているブタ、ニワトリなどでは、含まれるフィチンが吸収されずに腸管を通過するため、 自然界のリン濃度を上昇させ、富栄養化などの環境問題につながると懸念されているが、 飼料にフィターゼを添加することでフィチン由来のリンの吸収を増やし、 環境負荷の軽減に効果があったとの報告がある。
実用販売化例としては、反芻動物である牛の飼料としてフィターゼが含まれたものが販売されている。
また、ヒトの美容サプリメントとしても販売されている。
EC=3.1.3.8
フィターゼ活性が確認されている主な細菌:
BacillusStreptomycesXanthomonasPseudomonas
KEGG REACTION: R03371
--KEGG REACTION: R03371
EC=3.1.3.26
フィターゼ活性が確認されている主な細菌:
Escherichia coliKlebsiella pneumoniaeHafnia alveiYersinia kriatensenii
KEGG REACTION: R03372
--KEGG REACTION: R03372

機能に関する知見

機能を持つことが知られている生物

Bacillus subtilis (strain 168), Bacillus amyloliquefaciens 45, Bacillus amyloliquefaciens ATCC 158415 -- Greiner R. et al (2002) イオン・クロマトグラフィーを用いフィターゼの活性を測定している文献。
Escherichia coli (strain K12) -- Golovan S. et al (2000) appA geneがフィターゼととホスホアンヒドライド・ホスホヒドラーゼ活性があると示している文献。活性測定を行っている。
Hafnia alvei, Yersinia kristensenii --Ariza A. et al (2013) histidine acid phosphatases (E.coli に見られるフィターゼと同じタイプ)に関する文献。構造解析と活性測定を行っている。

Rule/Function 作成に関する特記事項

フィターゼには複数のEC番号が存在します。本サイトでは細菌での研究が行われ遺伝子まで同定されている EC 3.1.3.8、EC 3.1.3.26にターゲットを絞っています。

実用化例

  • 動物用飼料添加物(商品名: ゲンキターゼM 日産合成工業株式会社)
    乳牛の飼料に添加することで乳量増加、バルク乳中のSCC の減少、乾物摂取量の増加が期待される。
  • 美容サプリメント (商品名: ZYTAZETM(ザイターゼ) OCuSOFT 社製)
    体内の亜鉛濃度を高めボトックス注射の効果延長が期待できるとされているサプリメント。

参考文献

  • Greiner, R. et al. (2002). The pathway of dephosphorylation of myo-inositol hexakisphosphate by phytate-degrading enzymes of different Bacillus spp. Can J Microbiol. 48(11):986-994. PMID: 12556126
  • Golovan, S. et al. (2000). Characterization and overproduction of the Escherichia coli appA encoded bifunctional enzyme that exhibits both phytase and acid phosphatase activities. Can J Microbiol. 46(1):59-71. PMID: 10696472
  • Koshy, J. C. et al. (2012). Effect of dietary zinc and phytase supplementation on botulinum toxin treatments. J Drugs Dermatol. 11(4):507-512. PMID: 22453589
  • Ariza, A. et al. (2013). Degradation of phytate by the 6-phytase from Hafnia alvei: a combined structural and solution study. PLoS One. 8(5):e65062. PMID: 23741456

関連外部リンク

MiFuPへのリンク

(更新日 2014/03/12)