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アラニンラセマーゼ

概要

アラニンラセマーゼ (EC 5.1.1.1) は L-アラニンと D-アラニンの変換を触媒する酵素である。補酵素としてピリドキサール 5'-リン酸(PLP)を必要とする。 真正細菌の細胞壁の成分(ペプチドグリカン)の必須成分であるD-アラニンを合成するため、本酵素はすべての真正細菌に存在する。
本酵素の欠損株は致死となる。ヒトのタンパク質合成ではL-アラニンのみ使われているため、抗生物質のターゲットとして注目されている。
Lactococcus lacti では アラニンラセマーゼをコードする alr 遺伝子を破壊することにより D-アラニン要求性となり、 L-アラニン(食品添加物や医薬品に使用される)の特異的生産を効率的に行うことができる (PMID: 10385325)。

機能に関する知見

機能を示すメカニズム

D-alanine metabolism
D-alanine metabolism --KEGG Pathway: map00473
L-アラニンの効率的生産については、ピルビン酸からL-アラニンを合成する L-アラニン脱水素酵素があり、 かつ、ピルビン酸から乳酸を作るL-乳酸脱水素酵素とアラニンラセマーゼの欠損により、L-アラニンラセマーゼの効率的生産が可能となる。
Listeria monocytogenes のような一部の細菌においては、D-アラニンアミノトランスフェラーゼ(dat, ピルビン酸とグルタミン酸を D-アラニンと α-ケトグルタル酸に相互変換する酵素)によっても D-アラニンが生合成されるため、アラニンラセマーゼ遺伝子( alr )欠損だけでは致死とならず、 alrdat の二重欠損により D-アミノ酸要求性となる。
Escherichia coliSalmonella typhimurium はアラニンラセマーゼをコードする遺伝子を2つもち( alrdadX )、 alr は細胞壁構成成分の D-アラニン合成に用いられるのに対し、dadX はL-アラニンが過剰に存在する際にD-アラニンに変え、 この D-アラニンが D-アミノ酸脱水素酵素によってピルビン酸に変換され、エネルギー源として用いられると考えられている。 両酵素は同じ反応を触媒し、また補酵素に PLP をもつ。
真核生物でも、D-アラニンを資化できる酵母の一種 (Schizosaccharomyces pombe) や、D-アラニンを含む環状ペプチドであるシクロスポリンA を生産するカビの一種 (Tolypocladium niveum) には本酵素が存在する。

機能を持つことが知られている生物

上述のとおり、 Lactococcus lactis ほか、多くの生物種で研究されている。

実用化例

  • アラニンラセマーゼ(商品名:ALANINE RACEMASE (AlaR) ユニチカ株式会社)
  • ネーデルランズ 他3名. 組換え微生物によるアラニンの生産法. 特許公表2002-508973. 2002-03-26.
  • 三菱油化株式会社. DL-アラニンの製造法. 特許公開平5-211879. 1993-8-24.

参考文献

  • Hols, P. et al. (1999). Conversion of Lactococcus lactis from homolactic to homoalanine fermentation through metabolic engineering. Nat Biotechnol. 17(6):588-592. PMID: 10385325

関連外部リンク

MiFuPへのリンク

(更新日 2014/03/12)